BAD & BAD【Ⅰ】
「で、その時に1位でゴールしたのが、凛さんだ!」
「あっそ」
「あっそってなんだあっそって!」
桃太郎がどーんと副総長を両手で示して堂々と宣言するが、当の本人がうつらうつらしていたら、あっそとしか言い様がない。
一瞬だけだったとはいえシリアスな空気になったのに、よく平気で寝ていられるね。
その神経の図太さ、私にも欲しいよ。
「ちなみに、桃太郎の罰ゲームは何だったの?」
「ねぇよ、俺には。たまに罰ゲーム無しのラッキーなマスがあんだよ」
「なーんだ、つまんないの」
「つ、つまんない!?新入りのくせに失礼すぎじゃねぇか?あ!?」
よかった、皆の調子が戻ったみたいだ。
心の中で、ホッと安堵する。
「あと2週間もすれば、格下げされた阿呆な幹部に会えるよーん」
「それは楽しみだ」
弘也のダラけた言い方に、私はあえて真面目に返す。
元総長で今は出禁中の幹部は、一体どんな奴なんだろう。
あぁ、どうか、どうか。
お願いします、神様。
少しはまともな奴でありますように。