BAD & BAD【Ⅰ】
いつも無気力で動きたがらないのに、今日の副総長はなぜかこのケーキを切りたいらしい。
「凛さん、食べますか!?」
「あぁ」
「じゃあ今切りますねっ」
桃太郎が、私の手と副総長の手の間を縫って、ケーキナイフをさりげなく取った。
慣れた手つきでケーキを切り分けていく。
そうか、こういうのを「漁夫の利」と言うのか。覚えておこう。
「副総長って、アイスが好きなんじゃなかったっけ?」
「俺は、」
「凛さんは、アイスの次にチョコがお好きなんだよ!」
副総長の言葉を奪った桃太郎が、ドヤ顔をする。
副総長自身に、言わせてあげてもよかったんじゃないだろうか。
副総長がちょっとしょんぼりしてるように見えるのは、私だけ?
「だから、珍しく自ら行動してたんだ」
私がなるほどと呟けば、副総長はこくんと小さく頷いた。
アイスとチョコが好きって、相当な甘いもの好きなんだな。
私と気が合いそう。