BAD & BAD【Ⅰ】
よかったね、副総長に『うまい』って言ってもらえて。
でも、さすがにうるさいよ?
地響きが起こりそうなくらい、声量でかかったよ?
私は今、超幸せな気分に浸ってるの。
あと一口で終わってしまう幸せ気分を、バカでかい声に壊されたくないの。
この気持ち、わかってくれるよね?
だから、もうちょーっと、声を抑えてくれる?
そして、私は最後の一口を大きな口の中に入れ、頬張り、あっという間に自分の分のチョコレートケーキを食べ終えてしまった。
幸せな時間は、たった一瞬だけだった。
うぅ、もう食べちゃった。
おかわりをねだりたいけど、余りは無い。
幸せが過ぎ去った後は、悲しみしかない。
俯いていたら、ふと隣から視線を感じた。
顔を上げると、副総長が私をじっと凝視していた。
なに?私、今あなたに構ってられる元気ないんですけど。
口の中に残っていたチョコレートの甘さが消えてしまった直後、副総長の手が私の顔面めがけて迫ってきた。
「!?」
怖い、怖い、怖い!
落ち込んでるマイハートに、恐怖心を与えるつもり!?
副総長が何を考えてるのかわからないから、さらに怖い!!