BAD & BAD【Ⅰ】
今、弱音を自分の中に溜め込んでしまったのだろうか。
私はそこまでわかっていながら、何も聞かなかった。
聞けなかったわけじゃない。「それに、何?」と聞けば、たかやんなら続きを教えてくれただろう。
けれど、聞かなかった。
論理的な理由なんかない。
ただ、たかやんの苦しげな表情をこれ以上見たくなかっただけだ。
本心を溜め込みたければ、奥底まで溜め込めばいい。
吐き出せる時が来たら、自分のペースで吐き出せばいい。
それで、いいんだ。
焦らなくてもいいんだよ、たかやん。
――私は、待たない。
待ってるのは嫌いなの。
だから、不透明に引かれた境界線の近くでのんびりしながら、違和感を覚えさせることなく笑って、きゃっきゃっと楽しそうに遊んでる。
境界線の向こう側から「まーだだよー」と言われている限り、決して境界線の奥へと踏み込まない。
でも「もーういいよー」と言われたら。
そう、言ってくれたなら、軽い足取りで境界線を超えて、壁を作っていたラインを消そう。
迷っているなら、精一杯悩んで答えを出して。
なんとかしたいなら、後先考えずに動き出して。
頼ってほしかったら、不安でたまらなくても手を伸ばして。
大丈夫じゃなくても、また苦しんでも、きっと支えることはできるから。