BAD & BAD【Ⅰ】
派手に洋館にやってきた訪問者の1人で、私と真修の幼なじみであるこいつの名前は、渡部 朔【ワタベ サク】。
1つ年上の高校3年生で、私と同じ学校に通ってる。
幼なじみ3人の中で、1番頭のいい秀才。
朔の母親であるいちごさんは、日本を代表する、モデル出身の名女優。
たまに見せる、俺様な性格が玉にキズ。
けれど、それすらもチャームポイントに変えてしまうほど、母親に似て超美形でスタイル抜群。
「あんた、さっき下僕くんに『総長』って呼ばれてたけど、どういうこと?」
「げ、下僕くん!?変なあだ名つけんな!俺には、綾川 銀【アヤカワ ギン】っていうかっこいい名前があるんだよ!!」
下僕くん、もとい銀に強気な対抗心を向けられ、私はどうすればいいのかわからず目を伏せる。
自分で自分の名前をかっこいいって断言できちゃうなんて、相当自分の名前を気に入ってるのね。
いいよ。素敵だよ。私もかっこいいと思うよ。
「こいつ、何?」
「黒龍【コクリュウ】の下っ端。まだ中2だけど、意外に強ぇんだぜ?」
「ふーん。……って、え!?黒龍!?ということは、もしかして、あんたが黒龍の総長!?」
「ああ、俺が黒龍の16代目総長だけど?」
「えええっ!?」
黒龍は、昔はタチの悪い危険な暴走族だったらしいが、今では「最凶」の肩書きを持ち、神雷と同盟関係を結んでいる。
そんな、神雷と肩を並べている族の総長が、朔……!?