BAD & BAD【Ⅰ】
本当に、朔は黒龍の総長なんだ。
そう、実感した。
「お前らの耳にも入ってるかもしんねぇけど、一応報告しとこうと思ってな」
「報告?」
桃太郎が首を傾げる。
同盟関係とはいえ、情報交換の場を用意せずに、挨拶がてら報告しに来るのは珍しい。
「また、神雷の裏切り者による犠牲者が出た」
和やかだった空気が、急激に凍てつく。
脳裏には、先ほど観察した、写真に写る十蔵寺剛が過っていた。
犠牲者って、何?
「また、か……」
「食い止めようにも神出鬼没で、情報を掴むのもやっとなんで、対策も立てづらいんっす」
「はっきりわかってることっつったら、神雷の裏切り者であるあいつが関わってることと、あいつの俗称くらいか」
たかやんの呟きにかぶせるように、報告の付け足しをした銀に相槌を打ちながら、朔が顔をしかめる。