BAD & BAD【Ⅰ】
全然話についていけない。
裏切り者が何かしでかしてることだけは、なんとなく察した。
「この1か月の間で、結構な数が殺られたねぇ」
「神雷も黒龍も、まだ被害はねぇけどな」
心なしかあまり元気のない弘也の声色に続けて、桃太郎がギリ、と歯を食いしばった。
真修は黙ったまま俯いて、嘆きを浮かべている。
「まあ、とりあえず、教えといたぜ。何かすんのかしねぇのかは、あいつと仲間“だった”お前らが勝手に決めな」
「……ああ、ありがとな」
たかやんが葛藤しながら告げると、朔は総長の表情をやめて困ったようにほころばせた。
「んじゃあ、新総長さんにも会えたし、今日のところは帰るわ」
「じゃあね、朔」
「おう、またな幸珀」
背を向けた朔に私が手を振れば、私のことは見えていないはずなのに、絶妙なタイミングで手を振り返してくれた。
それが、少し嬉しくて。
ゆるゆると口元を緩め、朔と銀が洋館を出るその時まで、2人の背中を見送っていた。