BAD & BAD【Ⅰ】
いつから、寝れなくなったんだろう。
神雷を出て行ってからだろうか。
あいつらの騒がしさに慣れてしまって、こんなにも静かだと逆に寝れなくなった。
苦しい。
でも、苦しんじゃいけない。
全てを置き去りにしたのは、自分なのだから。
裏切り者に成り下がった俺は、心境を変えるために、腰まであった髪を男らしくばっさり切った。
おかげで、なんだか体が軽い。
髪型ひとつ変えただけで、取り巻く空気感も変わった気がした。
「……はぁ、やっぱ寝れねぇ」
呟いた声は、すぐに蒸発する。
ため息を吐きながら、イヤホンを耳に付けて音楽を流した。
弘也からおすすめされた、インディーズのバンドの曲だ。
思えば、バンド好きになったのは弘也がきっかけだった。
激しくも繊細な曲に、瞼を閉じていく。
不思議だ。
あんなに眠れなかったのに、この曲を聴きだした途端、眠気がグワッと押し寄せてくる。