BAD & BAD【Ⅰ】
懐かしいから、だろうか。
この曲を聴いていると、いつでもどこでも和気あいあいとしていたあの頃が、弘也と鷹也と一緒にはしゃぎ合いながら笑っていた時間が、たまらなく懐かしく感じて。
それでも、元には戻らない、戻れない関係が狂おしくて。
だからこそ、この曲が心臓の深い部分にまで侵食して、伝わってくる。
意味も理由も秘密も責任も、
何もかも全部消えたとしても、きっと俺にとっての“1番”はずっと同じままなんだろう。
――耳の奥をかすめる、美しき記憶。
冬の寒さまでも蘇って、過去であり思い出でもある情景が、瞼の裏に映る。
『ははっ。なに転んでんだよ、剛。だっせー!』
『今のお前も十分ダセぇよ』
『鷹也、ひでぇ!実の弟に対してなんでそこまで冷てぇの!?』
持っていた羽子板を落とした上に派手に転んでしまった俺を、おちょくる弘也の目元は、墨で真っ黒に染まっている。
そんな弘也を、俺と鷹也が腹を抱えて笑った。
くすぐったくて、楽しくて。
俺もつい笑ってしまった。