BAD & BAD【Ⅰ】
なぜか突然、隣にお母さんが現れて、私の幼い手をぎゅっと握った。
『ねぇ、幸珀。決していじめをしてはダメよ。いじめは、時に人を殺す。だから、もし誰かがいじめられていたら、助けてあげてね』
そう約束した、“あの日”の帰り道。
あの約束がだんだんと癖になるくらい、今では私自身に染みついている。
たとえ「化け物」と恐れられても、私はあの約束をずっと守り続ける。
再び、場面が変わり、真っ黒になる。
私1人しか、いない。
不意に、前髪をかすめる、温もり。
あれ?
どうして。
ここは夢のはずなのに、温もりなんて……。
誰かの指先が、前髪を梳く。
『秘密を、聞いちゃったんだ』
『愛してるよ、幸珀』
一気に溢れてくる、過去の残骸。
気色悪い感触が、私の感覚を奪う。