BAD & BAD【Ⅰ】
教室にひとりきりはつまんない。
たかやん、かまって。
「あ」
「ん?どうしたの、たかやん」
自販機のある場所にたどり着くと、たかやんが急に立ち止まった。
たかやん……?
また、あの表情だ。
苦しくて、悲しくて、怒りが沸いて。
どうしたらいいかわからずにいる、歪んだ表情。
洋館を掃除したあの日以来、その表情を見ることはなかったのに。
どうして?
生まれた疑問を早く解決したい気持ちに駆られて、たかやんの見据えてる先をなぞった。
たかやんのライトブラウンの瞳が捉えていたのは、自販機で紅茶を買った1人の男子。
「あいつ……」
オリーブ色に染まる髪があるのは、右半分だけ。刈ってある左半分には、器用にイナズマのマークが彫られてある。
あのへんてこな髪型には、覚えがある。
「……NINA?」