BAD & BAD【Ⅰ】
「さっきからブツブツ言って、どうかしたの?」
師匠の声が、ようやく耳の奥を通った。
師匠と真修は眉尻を下げて、不安そうに私の顔を覗き込む。
2人は、この違和感に気づいていないの?
私だけが、感じているの?
「幸珀?」
「なんでもないですよ、師匠」
「本当に?」
「うん、真修も心配しないで。どうやってサボろうか考えてただけ」
「……心配して損した」
「あはは、冗談だよ。真修、怒んないで」
2人には、言えない。
たまたま今日だけ不良が少なかっただけかもしれない。
私の勘違いかもしれない。
それなら、いいんだけど。
見つけてしまった引っかかりがただの幻だったら、2人に……神雷に余計な心配をさせるだけだ。
ならば、私は、言わない。