BAD & BAD【Ⅰ】
弘也が階段の方に駆け寄って、カバンからスマホを取って、通達されたメールを確かめる。
繁華街にいた女子を片っ端からナンパして、デートのお誘いのメールが届いたのかな。
すると、弘也の笑顔が引きつった。
「弘也?」
師匠が呼びかけても、応答はない。
どうしたんだろう。
「チッ、親がメアド教えやがったのか」
え?
弘也のいる方から、弘也らしくない、殺伐とした怨言が聞こえた気がしたけど……。
聞き間違い、だよね?
今もなお、通知音が続いてる。
送信者さん、どんだけメール送ってるんだよ。
直後。
――バキッ。
いっそ清々しいほど鈍い音が響いたと思ったら、通知音が止んでいた。
「まだ赤い糸なんてもの信じてんのかよ。きっも」
「……あ、あの、弘也?」
誰こいつ、と思わずにはいられないくらい無情な弘也に、私はおずおずと窺う。
弘也の手には、怪力で真っ二つに壊されたスマホが。