BAD & BAD【Ⅰ】
ホールでは、師匠と真修も加えて、鬼ごっこらしきものを続けていた。
「鷹也!凛、起きたかー?」
「ああ、今起きたぞ」
「凛さんがお目覚め!?」
弘也の徹底的なイジりを超高速で避けた桃太郎が、目を輝かせながら遊戯室へ駆けていった。
桃太郎にしっぽと耳が見えたような……。
「なあ、京。広間には誰も近づくなって全員に伝えとけ」
「いいけど、広間で何かあるの?」
「ちょっとな」
たかやんは師匠にそう伝言を託すと、静かに広間の扉を開けた。
わざわざ話しやすいように、2人だけの場所を作ってくれるんだ。
たかやんは、これから私がしようとしている相談の内容にうっすらと理解しているのかな。
広間に入ってすぐ電気を点けた。
シャンデリアの豪華な光に、瞼の裏がチカチカする。
たかやんがてきぱきと角に置いてある大量の椅子から2脚取り、長テーブルの端に置いた。
私は、片方の椅子に座ったたかやんの真正面にある椅子に、ゆっくりと腰掛けた。
たかやんと、テーブルを挟んで向かい合う。
「はい、コーヒー」
「うわ、まじでホットだ」
テーブル上を滑らせて、たかやんの前に缶コーヒーを運んだ。