BAD & BAD【Ⅰ】
「俺らが剛の素性を知って問い詰めたら、あいつは悪気なさそうに『そうだ』って頷いて、逃げるように神雷をやめてった」
「ふーん」
「……俺らはあいつのこと、信じてた、のに」
たかやんは俯いて、溢れた弱音をすくい取るように口の端を結んだ。
信じてた、か。
「もしかしてさ、たかやんが総長を降りたのって、本当は十蔵寺剛の裏切りと関係してるんじゃない?」
「よくわかったな」
「お、直感が当たった」
「直感だったのかよ」
覇気のないツッコミだ。
たかやんらしくない。
「神雷ゲームでの罰ゲームっつーのは建前で、本当は剛の裏切りを今まで見抜けなかった俺の……総長の責任だと思ったから降りたんだ」
「へぇ」
「自己満足なのはわかってる。だけど、あいつを信じていたいと思う反面、神雷の空気は悪くなる一方で、そうやって責任を取るしかなかったんだ」
話の後半から、たかやんと目が合わなくなった。
弱音を吐き出すので精一杯なのか、それとも……。