BAD & BAD【Ⅰ】
冷え切った缶コーヒーを掴む手が、ほのかに力む。
「剛はアホなとこもあるけど努力家で、裏切るなんてむごいことは一生できねぇような人間だと、思ってた。だって、俺の知るあいつは、すんげぇいい奴だったから。でも……っ」
……うっざいなあ。
『信じてた』『総長の責任』『だけど』『自己満足』『信じていたい』『だって』『いい奴だった』『でも』
さっきから、うじうじしてばっかり。
さすが、弱音を大量に溜め込んでいただけはある。
ウザすぎてため息すらこぼれない。
私はムカつきを表情に浮かび上がらせながら、缶コーヒーを持って椅子から腰を上げた。
――ビシャアァッ……!
「っ!?」
「目ぇ覚めた?」
ずぶ濡れのたかやんと、空になった缶と、滴り落ちるコーヒーの雫。
そう、私は、たかやんにコーヒーをぶっかけたのだ。
躊躇なく、優しさの欠片もなく、たかやんの頭上から思いっきり。
安心して?コーヒーはとっくに冷たくなってるから、火傷はしないよ。