BAD & BAD【Ⅰ】
十蔵寺剛は何も言わずに、フェンスに手を置いた。
こ、これはいわゆる、壁ドンというやつなのでは!?
漫画でよくあるやつだ!
まさか現実で体験できるなんて、最高。
私の心の準備は完璧よ。
いつでも告白してきてちょうだい。
返事は……その……ごめんなさいだけれど、落ち込まないでね?
ほら、私って高嶺の花的存在でしょ?
そんな美しい私に振られたからって、気にやむ必要はないわ。
「お前、昨日俺ん家に来てた奴だな?」
「っ!」
夢から無理やり目覚めさせる、地を這うような、ドスの利いた声色。
正体が、バレてる!?
「念のため注意しておくけどな、しらばっくれたって無駄だぞ。こっちは確信を持って言ってんだ」
これは、ごまかしてもデメリットしかないな。
「……用件は何?」
動揺を動作に表さないように平静を保ちながら、問いかける。
「なんで性別偽ってまで神雷にいんのかは知らねぇが、これ以上神雷に関わるな」
私を危険人物だと思ってる……?