BAD & BAD【Ⅰ】
サボりに来たんじゃなかったの?
私がいるから、帰っていったのかな。
ポツポツと降り出してきた雨が、私を濡らしていく。
不敵に笑う私に、十蔵寺剛も雨も気づいていない。
気づいたのは、ただ1人。
「厄介な奴に目ぇつけられたな」
給水塔の上から落とされた同情に誘われて、頭上を仰ぐ。
「いたんだ、朔」
今の今までスマホでSNSをチェックしていたらしい朔が、給水塔の上からはしごを使わずに飛び下りてきた。
朔はここに先に来て、サボってたんだね。
私のお気に入りのサボりポジションを盗らないでよ。
驚く素振りが全くない私に、朔は肩をすくめた。
「どうせ俺がいること、わかってたんだろ」
「さあ?どうだろうね」
「とぼけやがって」
朔と学校で会うのは、久しぶりだ。
学年が違うと、なかなか会えないんだよね。
だけど、こんなタイミングの悪い時に限って会っちゃうんだなあ。