BAD & BAD【Ⅰ】
どんな内容だったのか、想像したくもない。
破り捨てた紙切れが部屋のごみ箱に残ってることさえ、たまらなく嫌だ。
「また何かあったら言えよ」
朔は、私のトラウマを知っている。
だからこそ、冗談半分にではなく、真剣な表情で私を見つめている。
「俺があいつからお前の自由を守ってみせるから」
束縛が嫌いになったきっかけの、中学2年の春。
『大丈夫だ。俺が、守ってやる』
ぐちゃぐちゃに錯乱していた心で、自由をただひたすらに求めていた私の手を、朔がぎゅっと握って。
私より弱いくせにそう誓ってくれた言葉が、脳裏を過っては、灯る。
「そう言うんなら、もっと強くなってよね」
「うっ、そ、それは……!」
本当は、心強い。
私を守れるほど強くなくても、あいつと1対1で居るよりは、朔の存在が近くにあった方がずっと楽。