BAD & BAD【Ⅰ】
数年前、ほんのわずかな期間だけ、この町に出現したNINA。
幼い子どもように小さな容姿だったと噂されていたNINAは、十蔵寺剛の言う通り、もはや都市伝説の存在と化していた。
しかし、今でも、繁華街にたむろしている不良の間では、こんな注意が密やかに根付いている。
『NINAには油断するな。あいつは化け物だ』
そんなNINAの名を利用して、不良撲滅隊は不良に恐怖を植え付けていたんじゃないの?
それじゃあ、不良撲滅隊にはNINAなんかいない、ってバレたらどうなるのかな。
「ねぇ、バラされたくなければ、あんたん家で遊ばせてよ」
「……っ」
十蔵寺剛、どうする?
数十秒間続いた、睨み合いの後。
十蔵寺剛は断念したように、重いため息を吐いた。
「仕方ねぇな」
「やった!十ぞ……フルネーム面倒だから、剛って呼ぶね。ありがと、剛!」
「すぐ帰れよな」
「わかってるって」