BAD & BAD【Ⅰ】
浮き沈み激しい感情に支配されながらも、私は繁華街を抜けた。
人気がだんだんとなくなっていく。
神雷は有名な族だから、もちろんたまり場も割と知られている。
けれど、たまり場に神雷メンバー以外の人が立ち入ることはあまりない。
神雷のテリトリー内は、心臓がいくつあっても足りないくらい危ない場所。
そんなところに好き好んで入る者は、そうそういないのだ。
「ここか」
街外れにある、古びた洋館を前に立ち止まる。
幽霊が出るとか、そういうオカルト的な噂がいくつもありそうな雰囲気の洋館が、神雷のたまり場だ。
想像以上に大きいな。
しかも、ちょっと豪華だし。
う、羨ましいなんて思ってないんだからねっ!
別荘に欲しいなんて、1ミリも思ってないんだからねっ!
「…………ツンデレごっこはやめよう」
気持ち悪くなるだけだった。