BAD & BAD【Ⅰ】
「剛はどうしたいの?」
「俺は…………も、戻り、たい」
「そっか。皆が迎え入れてくれたらいいねー」
「軽いな、おい」
「えー、そんなことないよー」
なんだか、まだ体が重い。最近運動不足だったからなぁ。
私はとにかくリラックスしたくて、髪を結っていたゴムも取った。
さらり、と髪を揺らす。
「――あ、いた。おー…………い、って……え?」
私は、気づかなかった。
「お前って、誰よりも“漢”って感じだよな」
「私がイケメンなのは認める。けど、女だからやめて。これ以上女子力減らさないで」
「認めてんのかよ!!」
女の姿の私が剛と駄弁っていた路地の近くに、誰かが来ていたことに。
「ど、どういう、ことだよ……」
やけに強い風が吹き荒れて、私達を横切る。
不吉な予感を過ぎらせながら。