BAD & BAD【Ⅰ】
あんたらしくないよ?
桃太郎に何があったんだろう。
「そういえば、お前、路地にいる幸珀を呼びに行ったのに、1人で戻ってきたよな?」
「えっ、そうだったの?」
「さっきは見つけられなかったって言ってたけど、思えばその時からなんか変だった」
今日の副総長はよく喋るなぁ。
……って、今はそんなこと、どうでもよくて。
桃太郎が私を呼びに行ったって、本当なの?
私は作戦通り、ずっと路地にいたから、容易く見つけられたはず。迷子にでもなってたの?
「何があったんだ?」
「……えっと、その……」
桃太郎の濃いグレーの瞳を泳がせながら、ちらりちらりと私を捉えては、外す。
いやにたどたどしい口調が、胸を締め付けるのはどうして?
パーティー気分で賑やかだった周りが、私と桃太郎の微妙な空気感に侵食されていった。
「……実は、」
言おうか言わないか迷っていた沈黙を破る、桃太郎の弱々しい呟き。