BAD & BAD【Ⅰ】
そんなつもりじゃ、なかった。
そんなこと、言えるはずがない。
だって、こんなの、言い訳に過ぎない。
結果的に騙すような形になってしまったのは、事実だ。
「本当、なの……?」
師匠は驚愕しながら、私の答えを待ち構えるように一歩前に出た。
いつかこんな日が来るんだろうな。
なんて、のんきに思い描いていたけど、まさか今日だとは想定してなかったな。
思ったよりもずっと、冷静さを失ってる自分に、びっくりだ。
混乱、焦燥、困惑。
それらが、私の外側で渦を巻いている。
大きく広がっていくそれを止める術を、私はひとつしか知らない。
『ヒーローか悪役になればいいんじゃねぇの?』
“あの人”からの助言が、耳の奥をかすめる。
……大丈夫。
また“あの日”と同じように、悪役になればいいだけ。
そうすれば、きっと。