BAD & BAD【Ⅰ】
でも、言えない。
言ってしまったら、ヒーローにも悪役にもなれずに、現状にあやふやなわだかまりを残してしまう。
そんなの、ダメだ。
私はヒーローにはなれない、ずるい人間。
だから、自分が悪くなるしかないんだ。
たとえ、それが間違いだったとしても。
「どうして、男装なんかして、俺達に嘘ついてたんだよ!」
桃太郎の必死な形相に、フッと薄ら笑みを漏らす。
「確かに嘘ついていたけどさ、簡単に騙される方が悪いよね?」
「なに、言って……っ」
「こうも鈍いんじゃ、いつか最強の座をどっかの族に奪われるちゃうよ?」
私は桃太郎を逆なでした後、また息をこぼした。
混乱も焦燥も困惑も、私への怒りに変えてしまえばいい。
そしたら、全て収まる。
ヒーローになれていたら、この場をどう収めていたんだろう。
……なんて、考えても意味ないか。
どうせ、私には思いつかない。
「本当は、もう少し皆を騙して遊ぶ予定だったけど、バレちゃったならもういいや」