BAD & BAD【Ⅰ】
少年Tとノイズ
バタンッ、と重厚な扉が閉まる音が、虚しく鳴った。
幸珀がいなくなった洋館内は、静寂に包まれていた。
既視感に、囚われる。
まるで、剛が神雷を出て行った、あの悪夢の日が再来したかのようだ。
どうして、俺は何も言えなかったんだろう。
無意識にまた、本音を発するのを恐れてしまったのだろうか。
「……っ、あ、あの、」
誰もが現実についていけなくて固まっていたその時、唐突に真修が頭を下げた。
真修?いきなりどうしたんだ?
「す、すみません!!」
震えた謝罪が、クリアに響く。
「俺、知ってたんです。幸珀が女だって。黙っててすみませんでした!」
「な、んだと……?」
桃太郎が驚きの声を上げた。