BAD & BAD【Ⅰ】
「逃げんなよ」
「逃げてねぇよ!」
「そうやって上辺だけに惑わされて、本質を見抜こうともせずに取り乱してんのが、逃げてるっつーんだよ!!」
「……っ」
「これじゃ、前となんにも変わんねぇじゃねぇか……!」
あの悪夢を二度も繰り返すなんてごめんだ。
もう、間違えたくない。
今度は俺も逃げねぇから、お前らも逃げんなよ。
逃げ道を探すより、前だけ向いて突っ走る方が、ずっと心地よい。
「たとえ幸珀の正体を知らなかったとしても、俺はあいつが悪い奴だとは思えねぇよ」
「俺も、そう思う」
同意してくれたのは、まさかの凛だった。
きっと、凛も、わかってる。
幸珀はバカでアホでウザくて意味不明で鬱陶しいけど、それがきっと幸珀のいいところで。
知らぬ間に、神雷には欠かせない、ピースの1つになっていたんだ。