BAD & BAD【Ⅰ】
「もう、関係ないんだから」
そう突き放したら、なぜか図星を突かれたみたいに表情を曇らせた。
どうして。
桃太郎が、そんな表情するの。
揺れ惑う心情をはぐらかそうと、私の唇が開く。
「そういえば、今日、遊園地に行くんだって?」
「あ、ああ」
なんで知ってるんだ、と言わんばかりに桃太郎の目が丸くなる。
あの噂、事実だったんだ。
噂も侮れないな。
「そっか。楽しんできてね」
これは、紛れもない本心だ。
私が女だと知って混乱していた神雷が、遊園地に行けるくらい本調子に戻っていたことが、嬉しい。
「じゃあね」の挨拶もなく、淡白に顔を背けた私は、一歩、桃太郎から離れる。
「待てよ、新入り!!」
咄嗟に、背中にぶつけられた、その叫びは。
私を、必死に引き留めたがっていた。