BAD & BAD【Ⅰ】





「もう、関係ないんだから」



そう突き放したら、なぜか図星を突かれたみたいに表情を曇らせた。



どうして。

桃太郎が、そんな表情するの。



揺れ惑う心情をはぐらかそうと、私の唇が開く。



「そういえば、今日、遊園地に行くんだって?」


「あ、ああ」



なんで知ってるんだ、と言わんばかりに桃太郎の目が丸くなる。



あの噂、事実だったんだ。

噂も侮れないな。



「そっか。楽しんできてね」



これは、紛れもない本心だ。


私が女だと知って混乱していた神雷が、遊園地に行けるくらい本調子に戻っていたことが、嬉しい。




「じゃあね」の挨拶もなく、淡白に顔を背けた私は、一歩、桃太郎から離れる。





「待てよ、新入り!!」



咄嗟に、背中にぶつけられた、その叫びは。

私を、必死に引き留めたがっていた。



< 357 / 540 >

この作品をシェア

pagetop