BAD & BAD【Ⅰ】
「元はといえば、あんたが無謀にも唄子ちゃんに声をかけたから……」
「俺が悪いって言いてぇのか?」
「うん」
あ、やば。
条件反射で頷いちゃった。
マッチョくんが、怒りで顔を赤くしていく。
「てめぇ!!」
マッチョくんは、私の胸ぐらを掴んでいない方の左腕を振り上げた。
殴られる……!?
暴力振るいたくなるほど怒ってたの!?
どうしよ。殴られたら殴り返そうかな。
こいつを黙らせるには、そうした方が楽そうだ。
よし、正当防衛作戦でいこう。
さあ、マッチョくん!どんと来い!
私は目を瞑ることも逸らすこともせず、マッチョくんを睨み返した。
直後、マッチョくんの左拳が、私の右頬にぶつけられた。
「きゃああっ!!」
唄子ちゃんの悲鳴が、鼓膜をつんざく。