BAD & BAD【Ⅰ】
ちょ、待って。私、まだ殴ってないよ?
じゃあ、誰がマッチョくんを殴ったの?
突然のことに、頭がついていかない。
「幸珀に手ぇ出してんじゃねぇよ」
「ふ、副総長!?」
あぁ、そうだ。
やっと、この状況を理解できた。
マッチョくんを殴ったのは、偶然ここに通りかかったらしい、副総長だ。
「な、なんだてめぇ……っ」
「なんだっていいだろうが」
「ま、まだ殴るの!?」
副総長が殺気立って、マッチョくんを連続で数回殴った。
マッチョくんは痛みを我慢しながら、なんとか最後の力を振り絞って副総長の拳を避けた。
窮地を脱し、捨て台詞を吐き捨てる余裕もなく逃げていった。
マッチョくん、逃げ足速いなぁ。
「……大丈夫か?」
「あ、ありがと。でも、私1人でもなんとかなったのに」
「あー……なんか、つい、手が出ちまった」
なんか?つい?
あれが無意識的行動?
不良としての本能みたいなもん?