BAD & BAD【Ⅰ】
顔が青ざめていくのがわかる。
心臓がドキドキ激しくなって、呼吸が浅くなる。
――そんな時。
「何してんの?」
背後から、低めのトーンで発せられた声が、耳をかすめた。
近づいてきた足音が、あっという間に怖気づいている俺を追い越し、俺を痛めつけようとしていた不良の前で立ち止まった。
「まさか、カツアゲ?」
「だったらなんだよ」
この人、誰なんだろう。
見ず知らずの俺を、助けようとしてくれているのか……?
パーカーのフードを深く被っているその人は、度胸のある心とは裏腹に俺より小さくて、まるで女みたいだった。
「だっさい真似してんだね」
「……あ?」
パーカーの人の軽い挑発に、不良達はかっと熱くなり拳を振り上げた。
だが、その拳はいとも簡単に受け止められてしまう。
直後、パーカーの人は目にも止まらぬ速さで不良達の顔を殴った。