BAD & BAD【Ⅰ】
この人の手は、いつもこうだ。
とても優しくて、温かい。
――まるで、“あの人”の手のように。
なぜだろう。
副総長と“あの人”を重ねてしまうのは。
「だ、大丈夫」
「本当か?」
「嘘ついてどうすんのさ」
ドックンドックン、心臓がうるさい。
その高鳴りを打ち消すように、副総長の手を剥ぎ取った。
「副総長、助けてくれてありがとう」
改めてお礼を伝えると、副総長はムッと唇を尖らせた。
今の何が気に入らなかったの?
「もう、副総長じゃねぇだろ」
ふてくされながら呟かれ、「へ」と間抜けな声が漏れてしまった。