BAD & BAD【Ⅰ】
私は神雷をやめて、下っ端じゃなくなった。
要するに、今の私にとって、成瀬凛は副総長ではない。
「えっと、じゃあ……凛?」
試しに名前呼びをしてみたら、副総長……じゃなかった、凛は表情を小さくほころばせた。
どうやら、これで正解のようだ。
また、トクン、と胸が跳ねた。
「りーんさーん!!」
「あ、桃太郎」
すると、凛の忠犬の桃太郎が、観覧車のある方面からこちらに駆け寄ってきた。
うわっ、桃太郎だ!
また何か言われたら厄介だな。
ここは、逃げるが勝ちだ。
「唄子ちゃん、怪我ない?」
「は、はい」
凛に気を取られてすっかり放置してしまっていた唄子ちゃんは、手首以外、怪我した部分はない。