BAD & BAD【Ⅰ】
ホッと安堵してから、私は唄子ちゃんの白い手を取った。
「今日はもう帰ろう、唄子ちゃん!」
「え!?」
強引に唄子ちゃんを連れて走り出す。
後ろで凛と桃太郎の制止の声がしたが、聞こえなかったフリをした。
「凛さん」
「ん?」
「俺、あいつを連れ戻したいっす」
「……そうか。俺もだ」
私と唄子ちゃんが去った後。
2人がそんな会話をしていたことを、私は露ほども知らない。
颯爽と遊園地を退場して、電車を利用して地元に戻ってきた。
「ごめんね、急に弘也探し終了させちゃって」
「いえ、大丈夫です。どれだけ探しても見当たらなかったですし」
結局、観覧車で弘也に出くわした件は、唄子ちゃんに報告しなかった。
罪悪感を抱きつつも、これ以上神雷と関わったらダメだと、自分の中の何かが警告音を鳴らしていた。