BAD & BAD【Ⅰ】
「遊園地の案内やひろちゃん探しだけじゃなく、ナンパからも助けていただいて……本当にありがとうございました」
「どういたしまして」
唄子ちゃんが、礼儀正しくお辞儀をして、感謝を述べた。
可愛い子の手助けができて何よりだよ。
「いつか弘也に会えるといいね」
「会えますよ、絶対に」
笑顔で断言した唄子ちゃんの碧眼が、すっ、と細められる。
可愛い、よりも、どことなくかっこよくて。
キュンとした。
これがギャップ萌えってやつか!?
「それじゃあ、名残惜しいけど、バイバイ唄子ちゃん」
「さようなら、幸珀先輩」
優しく手を振って、手を振り返してくれた唄子ちゃんと別れた。
ぐう、とお腹が空く。
早く家に帰って、お昼ご飯食べたいな。
マイペースで無頓着な私とは裏腹に、唄子ちゃんは私の背中をじっと静かに眺めていた。
華奢な肩にかかる、美しい金糸に似た柔らかな髪を、なびかせるように払う。
「幸珀先輩、か……」
ソプラノの囁きは、心なしかひどく冷ややかだった。