BAD & BAD【Ⅰ】
私は、ヒーローになるんだ。
両頬を思い切り叩いて意欲を燃やしてから、ガラッ!と勢いよく扉を開けた。
思った以上に音が響いて、教室にいた全員の視線が私に集まった。
今にも泣き出しそうなAくんを、ほうきでつついていたBくんと彼の友達が、私が来た途端露骨に顔を険しくさせる。
Bくんがため息まじりに口角を上げて、Aくんから離れようと教室を出ようとした。
しかし、Aくんを守るようにAくんの前に立った私は、素早くBくんの腕を掴んで逃げるのを阻止した。
『なんだよ』
『あんたがダサい真似をまだ続ける気なら、私は絶対に許さない』
『は?』
今日の私は、昨日までの私とは一味違う。
今まで通りにいくと思うなよ。
『うぜぇな。放せよ』
Bくんが私の手を振りほどこうとするが、びくともしない。
Bくんの腕を掴む握力を、さらに力ませた。