BAD & BAD【Ⅰ】
私は、Aくんをいじめから救う、ヒーローになるんだ。
『離せっつってんだろ!?』
私の忠告に逆上したBくんは、持っていたほうきをブンブン振り回した。
私はBくんの腕を掴んでいた手で、こちらに襲いかかってきたほうきの柄を咄嗟に受け止めた。
ほうきの柄をグイッと自分の方に引き寄せて、Bくんの態勢を崩す。
そのまま流れに乗って、左拳でBくんの右頬をぶん殴った。
『キャーッ!!』
Bくんが腰を抜かして床にへたり込むと同時に、女子達の金切り声がはち切れんばかりに轟いた。
じんじん痛む左拳に瞳を落とした。
本能的に、反射的に、
私はBくんを殴ってしまっていた。
……違う、違う。
私は、Bくんの攻撃を止めようとしただけなんだ。
殴るつもりはなかったんだ。
ヒーローは矛にもなれる。
でも、私を見る周囲の濁った眼差しが、告げている。
私の矛はヒーローのソレとは違う、と。
私の矛は人を傷つけすぎだ、と。