BAD & BAD【Ⅰ】
『お、俺だって、殴ったりしなかったのに』
Bくんが鼻血を流しながら、かすれた声をこぼした。
は?殴ったりしなかった?
じゃあ、殴らなければ、何したっていいの?
責め立てたい気持ちをぐっと抑えて、正気に戻る。
『ご、ごめ……』
私は、Bくんに謝ろうと一歩近づいた。
だけど。
私を恐れて、ビクッと肩を持ち上げたBくんの右頬が、青く腫れ上がっていて。
無自覚に、足元に急ブレーキをかけていた。
その瞬間、私は初めて悟った。
自分の強さは、平均を遥かに超えた、異色の危うい力だということを。
周りから、私に対する恐怖心が直接伝染してくる。
助けようとしたAくんでさえ、私に怯えている。
私だけが、別世界にいるようだった。