BAD & BAD【Ⅰ】
私は、ヒーローにはなれない。
ならば、残る選択肢はただひとつ。
――悪くなるしか、ない。
『おい』
『っ!』
私はBくんの胸ぐらを掴み、睨みつける。
『もう二度と、いじめなんてくだらないことするな』
『いじめじゃない。いじってただけだ!』
『また殴られたいの?』
『ひっ……!』
『また誰かをいじめたら、許さないから。わかった?』
『わ、わかった』
Bくんは顎を震わせながら返事をした。
胸ぐらを乱雑に解放し、Aくんの方に目を向ける。
『あんたも、いじめられてばかりいないで、嫌なら嫌ってはっきり言いなよ。情けないな』
あえてAくんにも、刺々しい注意を投げた。
クラスメイトがコソコソと、
『円堂さんひどくない?』
『暴力もひどかったけど、あんな言い方しなくても……』
『見損なったぜ』
と、陰口を言っていた。