BAD & BAD【Ⅰ】
ほとんどの机が下げられた教室の真ん中に、向かい合わせの形で2つずつ配置された机に、私とBくん、それからそれぞれの親が座る。
はみ出すように脇にもう1つ在る机には、先生が座っていた。
最後の1人である、私の親を待っていた。
他のクラスメイトは既に下校している。
Bくんの母親は、私の斜め前の席で、ずっと私を憎らしげに凝視していた。
その隣で、Bくんが居心地悪そうに身を縮こませている。
ガラッ、と教室の扉がスライドされる。
お母さんが慌てた様子で訪れた。
『遅くなってすみません』
『幸珀ちゃんのお母さまですね?』
『は…………い』
一度立って礼をした先生に、お母さんは目を瞠る。
お母さん……?
『どうかしましたか?』
『あ、い、いえ……』
何事もなかったように対応するお母さんに、私だけが疑念を抱いていた。