BAD & BAD【Ⅰ】




面影は不完全で、ぴったりとは重ならない。


でも。



「やっぱり、」



“彼”自身は、何も、変わっていない。



「凛に頭を撫でられると、ホッとする」


「……そうか」



私は、凛の手のひらの温もりを永遠に忘れないように目を伏せていたから、気づかなかった。


凛の、ほころんだ表情に。




私が凛に無駄にドキドキしてた理由が、わかってしまった。


頬に熱が帯びていく。



あぁ、どうしてくれるんだ。


“あの日”、頑丈に錠をかけたはずの想いが、放たれてしまったじゃないか。





「……って、こんなことしてる場合じゃなかった!!」



そうだ、私はたまり場に行かなくちゃならないんだった!


和やかなムードに流されちゃうところだったよ。ふぅ、危ない危ない。



「急がなくちゃー!」



凛の手をどかして、再び走り出す。



あれ?



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