BAD & BAD【Ⅰ】
「10日前のことなんだけど」
「私が神雷を抜けた日のこと?」
「俺は別に、お前を責めたかったわけじゃなくて、ただ嘘つかれてたことが気に食わなかっただけで……えっと……」
皆は、騙したとか騙されたとか、そんなことどうでもよくて。
私自身を理解してくれた。
だから、もう誰も10日前のことは気にしていないし、むしろ忘れてるんじゃないかとも思っていた。
でも、桃太郎は。
私が神雷を抜けたのは自分のせいだと勘違いして、今も胸の内では苦しがっていたんだ。
謝ろうと、してくれてるのかな。
そんなのされたくないよ。
「桃太郎!」
「なっ…………ひゃひひゅんひゃよ」
桃太郎の沈んだ顔を見たくなくて、両頬を思いっきりつねって引っ張った。
うわ、餅みたいにすごく伸びる。マシュマロみたいに柔らかい。男のくせに。まじ羨ましい。
「元はといえば騙してた私が悪いんだから、もう気にすんなって」
びよーんと桃太郎の両頬を左右に伸ばしてから、手をパッと放した。