BAD & BAD【Ⅰ】
私、知ってるよ。
桃太郎も、私から目を背けようとはしなかったこと。
「もしそれでも罪悪感があるなら、私のために特大ケーキ作ってよ」
桃太郎は両頬をさすりながら、一瞬目を丸くして「なんだよそれ」と含み笑いした。
「……1つ、聞いていいか?」
「なあに?」
「なんで、男のフリして神雷に入団したんだよ」
「10文字以内で答えると……ふりょうのかんし」
「は?」
詳しい説明を求める桃太郎をスルーして、私も広間に入った。
大雑把だけど鮮やかな飾り付けがされた広間では、既にパーティーが始まっていた。
これは、明日の朝まで続くパターンだな。
「おっ、幸珀やっと来たな~!」
「その手にあるのはパイ?こっちに投げないでよ?」
「弘也、投げちまえ」
「いや、剛に投げて」
「どうしよっかな~」
「投げるなら絶対あっち。あの顔面だと、狙いやすいだろ?」
乙女心をわかっていない剛には制裁を与えよう。
私は弘也の手からパイを奪って、剛の顔面にベチャッとくっつけた。