BAD & BAD【Ⅰ】
凛は、体をくねくねさせて照れている桃太郎を放って、
ピックに刺した苺を、チョコレートの滝にそっと浸けてから、パクリと頬張った。
「うまい」
チョコレートフォンデュを一口で気に入った凛は、休む間もなく食べ続けていた。
早食い選手権じゃないんだから、もう少しゆっくり食べなよ。
「幸珀」
「あ、師匠」
「はい、これ」
「ありがとうございます」
声をかけてきた師匠が、オレンジジュースの入ったコップを私に渡した。
お酒じゃないんだ。
さすがは師匠だ。不良なのに不良になりきれてない。
オレンジジュースを選ぶところが、また師匠らしい。
「戻ってきてくれて嬉しいよ」
「ここはうるさいけど、飽きないですから」