BAD & BAD【Ⅰ】
――そんな時。
「きゃっ」
「通行の邪魔なんだよ」
近くから、甲高い悲鳴と刺々しい声がした。
口論を一旦やめて、何事かと声のした方へと顔を向けると。
太った男にぶつかって後ろに転んでしまった、華奢な女の人がいた。
太った男と、そいつの隣にいる細身の男は、女の人にわざとらしくぶつかったくせに逆ギレしている。
うわ、ないわー。
あいつら、絶対モテないわ。
女に優しくできない男は、一生私のようなリア充にはなれないぞ?
「お嬢さん、大丈夫ですかー?」
「怪我とかしてないっすか?」
「は、はい。ありがとうございます」
いつの間に移動していたのか、弘也と剛が、転んでしまった女の人に紳士的に手を差し伸べていた。
太った男に怯えていたはずの女の人は、心なしかイケメンに助けてもらえて嬉しそうだ。
抜け目のない奴らだ。