BAD & BAD【Ⅰ】
ポツポツと、小雨が降ってきた。
辺りが陰っていく。
雨に逆らいながら、寂れた南の方角を進んでいく。
こちら側に踏み入れたのは、トラウマが刻まれたあの時以来だ。
居心地の悪さは、あまり感じなかった。
無我夢中に走ったおかげで、早々に廃校に到着した。
雨を吸収して重くなった気がするパーカーで、輪郭を伝う汗を拭う。
汚らしく錆びついている校門、神雷の洋館よりボロボロの外装、2階のとある教室の窓は割れていた。
「偽NINAがいなければいいのに」
ここに、ここだけには、いてほしくない。
トラウマが蘇りそうで、どうしても願ってしまう。
呼吸を整えながら、おずおずと廃校の敷地内に侵入した。
校門を過ぎ、校舎の周りを回る。
「あ、やっと来た」
横切ろうとしたグラウンドに、奴は、いた。