BAD & BAD【Ⅰ】
小学4年生の、冬の始まり。
クラス内のいじめが片付いた“あの日”。
私はお母さんと手を繋いで、帰り道をたどっていた。
『幸珀は、あの男の子を、いじめたの?』
いやに歯切れの悪い問い方だった。
お母さんには、真実を打ち明けよう。
不安にさせたくないもん。
『いじめてないよ。いじめてたのは、むしろあっち。私はそれを止めようとして、つい、殴っちゃった』
私って、強かったんだね。
強く、なっちゃったんだね。
下手くそな作り笑いは、お母さんにすぐに見抜かれた。
『不良だったお母さんが言っても説得力はないけど……不良の喧嘩じゃない、学校のいじめで暴力を振るってはいけないわ』
強がらないで、と慰められてるようだった。
この拳は、相手も拳を使うか、拳でねじ伏せなければならない相手ではないと、使ってはいけない。
“悪”って、大変だ。