BAD & BAD【Ⅰ】
仁奈さんは、黒髪のボブだったらしい。
放課後になって一度帰宅した私は、ミディアムロングだった髪の毛を、ばっさり切った。
黒い髪が顎下で整えられ、仁奈さんの面影を帯びる。
お母さんに写真を見せてもらったが、本当にとても可愛らしい女の子だった。少女漫画で例えるなら、王道ヒロイン系。モテモテだったに違いない。
午後6時少し前。
過保護な両親には『友達に夕飯に誘われたから行ってくる!』と嘘をつき、家を飛び出した。
目指した先は、学校。
ちょうど先生が校舎から出てきた。
徒歩で帰る先生を尾ける。
先生は、繁華街近辺にあるアパートの2階の角部屋に入っていった。
『ここが先生の家か』
独身だったはずだから、ここで一人暮らししているようだ。
尾行したことがバレないように、5分後にインターホンを押した。