BAD & BAD【Ⅰ】
昨日の帰り道でお母さんと、『ねぇ、幸珀。決していじめをしてはダメよ。いじめはね、時に人を殺すの。だから、誰かがいじめられていたら、助けてあげてね』と約束した。
そう、約束したんだ。
――だから、私は、“悪”に溺れる。
不良達がさらに何か言おうとする寸前で、声は失われた。
ドスッ、と私が殴ったからだ。
その日の私は虫の居所が悪くて、弁明の余地も、反撃のチャンスも与えずに、ただ一方的に力の差を見せつけた。
『な、なんだよ、このガキ』
『ば、化け物……!』
確かに、そうかも。
私は、異常な化け物だ。
納得してる自分が、なんだかおかしかった。
気づいた時には、不良達の餌食になっていた男子中学生は逃げていた。
最後の1人となった不良が、震えながら口を開く。
『お前は、一体、何者なんだ……っ』
返答してあげたのは、しいて言うなら、単なる気まぐれだった。
『NINA』