BAD & BAD【Ⅰ】
「僕は2人きりで会えて嬉しかったよ」
2人きり。
ありきたりな単語ひとつで、こんなにも、心の臓をえぐられる。
後ずさるしか、できなかった。
「手紙は読んでくれた?」
「読むわけないでしょ」
震えながらも睨んでも、善兄は怯える素振りを全く見せず、甘ったるく瞼を伏せる。
「……まいっか。どうせもうすぐわかることだし」
何?
何が、わかるっていうの?
「本当はもっと2人きりで話していたいけど、幸珀も突然のことに動揺してるみたいだし、今日はもう帰ることにするよ」
いやに2人きりにこだわる善兄を、さらにきつく睨んだ。
大歓迎だ。
さっさと帰れ。
もう二度と、私の前に現れるな。